犬と猫と人間と。

 

犬と猫と人間と [DVD]

犬と猫と人間と [DVD]

 

 

毎年、身も凍るほど捨てられ、殺されてゆく犬や猫たち。

 

日本各地に捨てられ、殺されてゆく犬や猫たちがどのように処分され、また、保護されてゆくのかを、幅広いフィールドからドキュメントした作品。

 

このドキュメンタリーは、長年猫を保護し続けたおばあさんが、一人の若手映画監督に捨てられてゆくペットたちの現状を撮影してほしいという依頼から始まります。

「なぜずっと猫を保護しつづけたのか」という監督の質問に、おばあさんはぽつりといいます。

 

「猫は人よりましだから。」

 

 

そこから、監督の5年にわたる取材が始まります。

 

殺処分所の様子や、動物愛護協会の奮闘、センター職員の譲渡会への取り組み、多頭買いによる遺棄、多摩川での捨て猫のあまりの多さ・・・。

 

中には、猫をいったん保護し、去勢手術をするさい、子宮にもうすぐ生まれる寸前の赤ちゃんが入っていて、その手術をしている女性の動物医師が、「なんてこと・・・」と声をつまらせ処置をする光景もうつしだされます。

取り出された大きな膜につつまれた、毛並みもみえる数匹の赤ちゃんたち。

 

まぎれもない命が、人間の手によって殺されてゆく。

 

もう、なんといえばいいのか・・・。

 

その処置をせねばならない獣医さんは、本当につらい立場で、そこには「正しい」「間違い」などなく、ただただ、時間とともに、小さい鼓動はどんどん静かになってゆく。

 

「ほんとうにたまらない。こういうことはほんとうにつらくて、伏してしまうほどつらい・・」

 

処置をしながら、ぽつりぽつりと話す若い女性の獣医師さん。

 

一方で職員や民間の人の力で保護され、育てられてゆく赤ちゃんの子猫たち。

同じ場所で、殺されてゆく動物と、生き残る動物。

 

こういう不条理な光景を、人間の世界に置き換えれるとすれば、その場所は「産婦人科」か、「戦場」だ。

 

 

わたしは今までペットらしいペットをハムスター以外飼ったことがないので、動物を買うことで伴う負担や経済的な問題や介護の大変さをまだ味わったことがありません。

そういう人間が動物を飼っている人にとやかくいうことではないと思うのです。

 

けれど、もし自分が動物を飼う場合は、ちゃんとしたしつけと、健康管理が定期的にでき、手術費も惜しまないぐらいのお金は絶対不可欠だと感じました。

感情ではなく、理性と経済力と、子供を育てるのと同じ覚悟が必要なんだと。

しつけと、人間への信頼をはぐくませることは絶対絶対必要だと感じました。

そしてやっぱり、人間同士が幸せであること。

人間が幸福ではない限り、笑って犬や猫たちに「遊ぼう!」といえる余裕をもたない限り人間社会の中に動物を愛玩対象として迎えるのはとても難しいことだと感じました。

人間が癒されるためだけに、ペットは生まれてきたわけではない。

 

ドキュメンタリーの中ではわたしの故郷の徳島県の愛護センターも取材されていて、

飼い主のマナーの悪さが露呈しまくっていました。

 

それを観て、

 

「ああ・・・うん・・・徳島は野良犬多かったなあ・・・」

 

「飼い犬でもつながずに離していた家、ほんと多かったよなあ・・・」

 

と、子供の頃、「銀河」ばりの屈強な野良の大型犬たちに幾度も追いかけられた経験がフィードバック。

10歳にも満たない小学生低学年の子供が、闘犬やシェパードやドーベルマンに追いかけられる恐怖。何度「こ、殺される!」と感じたことか・・・。

(なのでわたし、とてもとても犬苦手です・・・今でも小型犬も触れません;;

でも、犬の優しさや献身性はとってもとっても涙がでるくらい好きです。今生必ず克服しようと決めています。)

 

昔、子供のころに飼い主が愛情も注がずに、「犬がバカだから」といって放置している家もありましたよ・・・。

人がちゃんとしつけをしないと、犬だって本能のままで動くでしょうよ、とそのときは本当に怒りが込み上げてきたのですが、もうね、通じないんですよ。ぜんっぜん通じない、田舎の人は。

「だって、犬があほなんやもん」といってその犬は結局捨てられたんじゃないかな・・・。

 

ああ、そうだ、わたし、田舎のこういうところ・無秩序なところ・ときどき人権や命を完膚なまでに愚弄し続ける暴力性が大っ嫌いで家を飛び出したんだなあ・・・

こんなところには未来がないわと見切ったんだよなあ・・・・と、このDVDをみることで振り返ってしまった。

 

 

今では、親は親までの世代で感化されたり教育されたものがあるのだろうから、それを変えるのは無理。

自分たちのときはその価値観をかえればいいんだ、という結論に達し、当時の田舎の人の無秩序さへの憎悪には、さっぱり決別できたのだけど。

社会はどこだってグレーゾーン。それでなんとか回っているところもあると。

 

それに、今は田舎の人だけでなく、都会の人だってたいそう無秩序で暴力的だということもわかった。人間にも、動物に対しても。植物や花に対しても。

特に無関心・損得感情で動くのは都会の人が多いなあと。いつも逼迫して疲れてるから。

 

日本はほんとうに息苦しい。

いや、現在を生きていることは人間にも動物にもものすごくストレスがかかって窒息しそう。大人も子供も。

 

そしてそのストレスのしわよせが一番くるのは、人間ではなく、実は動物なんだろうなあ・・・。

人間の子供の命と、動物の命、どちらをはかりにかけたら、先に手離すかということになると、やっぱり動物なのだ。それはもう、人間の業なんだ。

 

だから、わたしは、暴力的で残酷で移り気が激しい生き物=人間なんだと自覚したい。

どんなに「ペットが好き!」とか愛護とか保護とかいっても、それは人間の持つ顔の50パーセントであって、もう50パーセントは、人は「捨てる」ことも「殺す」ことも簡単にできる悪魔なんだと。

わたしもその「悪魔」の一員なんだと。

 

・・・そう考えると、ペットブームというものがうすら寒い、気味悪いものに思えてきた・・・。

 

 

話が脱線してしまいましたが、いろいろなことが派生して考え込んでしまうくらい、強烈なドキュメンタリーでした。

 

もっとたくさんの人に観続けられますように。

震災後のペットたちを追った「犬と猫と人間と 2」もあるので、こちらもぜひ鑑賞します。

 

そして、今日は暴力的な発言が多いかも。すみません。

ここまで書いて「なんだよ!」と思われそうですが、わたしは、田舎がとても好きです。

その場を離れて、どれだけそこが自分にとって大切な場所だったかわかるんですね。

 

映画の中で、徳島県の捨てられた子犬を自分たちの力で育てていた子供たちと、それを見守り、大人のマナーの悪さを反省するお母さんたちに拍手。

なんだか希望をとても感じました。

努力しても変えることができなかった私たち世代の至らない部分や引きずっている悪習は、この子たちが断ち切って変えてくれるのかもしれない。

そして、その子たちの子供たちもまた・・・。